
法律なんて勉強したことないし、私には無理… 。
裁判所で働くなんて、やっぱり六法全書を丸暗記しなきゃいけないんでしょ?

ちょっと待ってください。それは大きな勘違いです。
こんにちは!元裁判所事務官のかもめです。
私は高卒で、しかも「ストレート(現役)」で裁判所事務官試験に合格し、採用されました。
当時の私は、法律の知識なんてゼロ。 憲法と民法の違いすらよく分かっていませんでした。
「じゃあ、どうして合格できたの?」と聞かれることが多いのですが、実はこれには試験の仕組みが関係しています。
あまり知られていないのですが、裁判所事務官(高卒者区分)の一次試験には、専門的な「法律科目」が出ないんです。
この記事では、私が実際に受験して分かった「試験のリアル」と、「学校の成績が良かった人ほど、実は合格に近い」という理由について、元裁判所職員(裁判所事務官)の視点で正直にお話しします。
※本記事は、筆者の受験体験と最新の試験情報を元に構成していますが、合格を保証するものではありません。
【試験内容】高卒区分の裁判所事務官に「法律科目」はない
まず、一番の誤解を解いておきたいと思います。 公務員試験には「大卒程度」と「高卒程度」がありますが、この2つは試験の中身がかなり違います。
- 大卒程度: 憲法・民法・刑法など、法律に関係した専門試験があります。
- 高卒程度: 法律に特化した試験がありません。あるのは、ほかの公務員試験と同じ「基礎能力試験(教養試験)」・作文・面接だけです。
試験に出るのは「法律」ではなく「高校までの教科」
高卒区分で受ける場合、試験に出るのは「法律」ではありません。
「国語・数学・社会・理科・英語」といった、小中学校〜高校で習った科目が中心なんです。
裁判所だからといって、難しい法律用語を身構えて覚える必要はありません。
裁判所職員に現場で求められているのは、「法律知識」ではなく、「基礎学力がしっかりした、事務処理が正確な人」だからなんですよ。
法律を知らなくても仕事は大丈夫?

Q:でも、試験で法律がいらないって、仕事は大丈夫なの?

A:裁判所が高卒区分の職員採用試験で求めているのは、「入庁してから法律を学ぶための、基礎的な事務処理能力(素質)」です。今の時点での法律知識ではありません。
実際、入庁してすぐの仕事は「事務手続き」が中心です。 法律の勉強は、最初はあくまで「自分の部署で必要な範囲」だけでOK。
「なぜこの作業が必要なのか?」という「根拠(エビデンス)」として条文を確認することはありますが、六法全書を最初から全部覚える必要はありません。

むしろ、私のときは採用面接の時点で、 「もし内定しても、法律の勉強を自分で始める必要はありませんよ」 と、こちらは何も聞いていないのに釘を刺されました(笑)。
本格的な法律の勉強はいつから?
本格的な「法律の勉強」が始まるのは、キャリアアップして「裁判所書記官」を目指す時期になってからです。
※高卒ストレートの方なら、入庁して5年目あたりから内部試験の受験資格が得られます。
だからこそ、入り口である「採用試験」の段階では、法律を知らなくても全く不利にならないのです。
【難易度】今は歴史的なチャンス到来!?昔とは状況が違います

高卒区分の裁判所職員採用試験って、倍率が高くて無理そう…

そう思っている人に、朗報があります。
実は今、かつてないほどの「狙い目」が来ています。
正直に言いますが、私が受験した当時は、「数十倍」もの倍率が当たり前の、恐ろしい激戦でした。
イメージしてみてください。 「教室にいる全員が不合格で、隣のクラスでやっと1人受かるかどうか」 それくらいの狭き門だったんです。
しかし、裁判所が公開している最新のデータ(2025年度)を見ると、全国平均の倍率は9.1倍まで落ち着いてきています。
特に東京などの都市部では「約4.1倍」というデータもあり、私が受けた「絶望的な激戦の時代」に比べれば、「努力が報われやすいボーナスタイム」に入っていると言えます。
ただし、油断は禁物!倍率には地域差があります
「じゃあ余裕だ!」と思うのはまだ早いです。 実は裁判所の試験は、地域によって倍率が全然違います。
- 東京などの都市部:合格倍率が 1ケタ台になることもあり、かなり狙い目。
- 人気の地方都市エリア: 依然として数十倍になることも!
特に地方で働きたい場合は難易度が高く、ライバルもまだまだ多いのが現実です。
私がストレート合格できた理由は「学校の勉強」のおかげ
私は正直に言うと、高校時代の成績は悪くない方でした(特に英語は得意でした)。
当時は「公務員試験って、予備校で特別な対策をしないと受からない」と思い込んでいたのですが、過去問を見て拍子抜けしました。

これ、学校の授業や教科書でやった内容と同じだ…!
そうなんです。 裁判所事務官(高卒)の試験問題は、決して難問奇問ばかりではありません。
「教科書レベルの基礎問題」を、いかにミスなく解くかを試される試験だと感じました。
高卒程度の裁判所職員採用試験は、真面目に勉強してきた人が報われる試験
もしあなたが、
- 学校の定期テストはある程度の点数を取っている
- 通知表の成績はそこそこ良かった
というタイプなら、すでに合格に必要な基礎力の7〜8割を持っています。
ゼロから法律を勉強し始める必要はないので、これまでの「復習」をするだけで十分に戦えますよ。
唯一の対策ポイントは「数的処理」。ここさえ解ければ合格がもっと近づく!
「じゃあ、何も対策しなくていいの?」というと、一つだけ「学校では習わない壁」があります。
それが、公務員試験特有の数的処理。
数的処理は公務員業務に必要な事務処理能力を測る科目で、「推理」と書かれていますが、探偵さんが行うような推理ではありません(笑)。 中身は、大きく分けて以下の4つです。
- 数的推理: 倍数・約数・素数など、中学数学に近い計算パズル。
- 判断推理: 「AはBより重い…」などの条件から正解を導く論理パズル。
- 空間把握: サイコロの展開図や、図形の回転などをイメージする問題。
- 資料解釈: グラフや統計表を読み取る問題。
高卒程度の裁判所事務官採用試験(基礎能力試験)では、数的処理が全体問題数の約30~40%を占める傾向にあるので、合格を目指すなら数的処理を避けるわけにはいかないんです。
ちなみに、私は完全に文系だったので、特に空間把握のサイコロを転がしたあとの正しい絵を選ぶ問題は苦手。反対に、判断推理や資料解釈は得意でした。
とはいえ、高校レベルのものは少なく、中学レベルの数学の知識があれば大概は答えられます。

じゃあ、普段の勉強で足りるんじゃないの?

実はここが落とし穴なんです。数的処理は、出題パターンが独特な科目。
いくら学校の成績が良くても、「解き方のコツ(パターン)」を知らないと、答えを導くまでに時間がかかるんです。
逆に言えば、数的処理さえ攻略してしまえば、合格はぐっと近づきます。
面接試験は「1回だけ」!コミュ力に自信がない人の穴場
もう一つ、私が高卒区分の裁判所職員(裁判所事務官)採用試験を「受けてよかった」と思ったポイントがあります。
高卒区分の裁判所職員採用試験は、人物試験(面接)の負担が少ないのです。
市役所や県庁などの試験では、最近は「人物重視」で面接が2〜3回あったり、集団討論があったりと、コミュニケーション能力が厳しく見られる傾向があります。
でも、裁判所事務官(高卒区分)の面接は、昔も今(2025年度)も「1回」だけです。
- 人前で話すのがあまり得意ではない
- 何度も面接を受けるのは精神的にキツイ
という人でも、筆記試験(一次試験)でしっかり点数を取っておけば、十分に合格を狙えるのが裁判所事務官試験(高卒)のいいところだと感じました。
私が実践した試験対策:まずは「数的処理」に慣れる!同時に学校の復習も
「裁判所だから」と気負って、分厚い法律の参考書を買う必要はありません(高卒区分の場合)。
今すぐやるべきは、シンプルにこの2つです。
- 高校の教科書・ワークの復習(知識分野)
- 「数的処理」のパターン慣れ(知能分野)
前述しましたが、特に2つ目の「数的処理」は、合否を分ける重要科目です。
この数的処理だけは、私はゲーム感覚で解けるようになるまで練習しました。
独学で高卒ストレート合格を目指す人へ
本でじっくり取り組みたいなら、解説が丁寧な「ワニ本」シリーズが定番で分かりやすいです。

数学が苦手でも読みやすいですよ!
独学で数的処理を攻略した勉強法
独学で数的処理を攻略するには、とにかく慣れることが大切です!
私の場合は、以下の勉強法を繰り返していました。
- 解説を見ながら問題の回答を理解して練習問題
- 半日~1日以上あけて、試験対策本に載っている同じジャンルの別の練習問題にチャレンジ
- 問題のパターンを覚える
慣れてくると、問題を見るだけで「このタイプね!」と思えるようになり、早く解けるようになります。
自信がついてきたら、過去問集にもチャレンジしていきましょう!

感覚が鈍らないように、大型連休や土日も必ず最低1問解くか、新たな問題にチャレンジしていました。
「高卒で裁判所なんて、すごく頭が良くないと無理なんじゃない?」
そう思っていたかもしれませんが、蓋を開けてみれば「学校の勉強+パズル」だけの世界です。
日頃からコツコツ勉強してきたあなたなら、法律の知識ゼロからでも、十分に高卒でのストレート合格を狙えます。
まずは「自分には無理だ」という思い込みを捨てて、「数的処理」の問題を1問解いてみませんか?
その1問が、安定した公務員生活への第一歩になるかもしれません。

高卒ストレートだと、公務員試験に特化した教科を教えてくれる先生は周りにいませんよね。
でも、高卒区分の裁判所職員(裁判所事務官)試験は、独学でも突破できるので、本記事を参考にぜひチャレンジしてみてくださいね!

