2013年4月〜2018年3月まで裁判所事務官(一時期は検察審査会事務官も兼務)として勤務し、現在はライターをしているみさちゅーです。
勤務当時の情報にはなりますが、裁判所事務官志望の方・公務員試験を控えている方に向け、裁判所職員の内部事情や仕事内容などをご紹介しています。
今回は、民事部や刑事部といった事件部に配属された際の裁判所事務官(裁判所職員)の仕事から得られたスキルや知識をご紹介します。
5年間裁判所事務官(裁判所職員)として働いて知ったのは、裁判所事務官は法律知識を持った「事務のエキスパート」になれる仕事であること。
法律知識はもちろん、事務仕事に必要なスキルや知識も身に付けられるので、将来的に転職を考える場合にも選択肢を広げられる可能性があります。
裁判所事務官の仕事内容についても詳しく解説しているので、裁判所事務官志望の方の参考になると幸いです。
法律関連の知識
多くの方が想像裁判所事務官(裁判所職員)の仕事からは、もちろん法律に関する知識が得られます。
民事部・刑事部など、事件関係の部署へ配属された裁判所事務官は、法律をもとに裁判手続きを進めていくのが基本。
根拠条文(根拠となる法律の条文)に当たりながら仕事を進めるため、法律に関する知識は自然と身についていきます。
ただ、仕事に使う法律の構成が入っていると知識の習得はよりスムーズになります。
例えば、民事部なら民法・民事訴訟法、刑事部は刑法・刑事訴訟法の知識が必要です。
裁判所事務官として働くことが決まったら、「こっそりと」予習をしておきましょう。
\「こっそりと」予習をする必要があるのはなぜ?予習の必要性やおすすめの書籍をご紹介しています/
弁護士から一般の方まで、電話の相手はさまざま。自然に電話応対スキルが身に付く
裁判所事務官(裁判所職員)になると、電話応対のスキルも身に付きます。
民事・刑事など、事件部に配属された場合、裁判所事務官が弁護士や検察官などからの電話を毎日受けたり、逆に電話をかけたりすることもあります。
電話が大の苦手な私でも、先輩方にフォローしてもらいながらなんとかなりました!
裁判所事務官が行う電話の内容は、書類の追加提出依頼や裁判日の調整など
電話の内容は、書類の追完依頼(追加提出の依頼)や裁判日の調整までさまざまです。
また、法廷で行われる裁判は誰でも見られる公開の手続き。一般の方からも、著名事件を扱う裁判がいつ開かれるか問い合わせがくることもあります。
電話応対を通して、状況に合わせて的確に判断・答える力が習得できる
裁判所事務官(裁判所職員)の仕事における電話応対では、状況に合わせて的確に判断・答える力が習得できます。
裁判所には、毎日さまざまな方から電話がかかってきます。
電話をとるまで誰からかかってきたのかわからない場合もあるうえ、内容は毎回異なることが大半。
電話を取ってからどう対応すべきか素早く判断し、問い合わせに対し正確に対応しなければなりません。
裁判所事務官の仕事内容のなかでも、意外と複雑で難しい事務のひとつです。
電話応対は先輩の裁判所職員をお手本に学ぶ
電話応対の方法は、主に先輩の裁判所職員を見ながら覚えていきます。
私が裁判所で働き始めた頃は、先輩の裁判所職員から「徐々に慣れていけばよい」と言われていました。
慣れるまでは誰でも緊張しますが、電話デビューの日を迎えたら積極的に電話をとり、経験を積むことが大切です。
\裁判所職員が行う電話応対の仕事については以下で詳しくご紹介しています/
来庁者ひとりひとりに合わせて、必要なことを漏れなく伝える「窓口応対力」
裁判所へ来られた方の対応をする「来庁者対応(窓口応対)」も裁判所事務官(裁判所職員)が行う仕事。
裁判所にはいろいろな方がいらっしゃるので、相手の方に合わせて柔軟に対応しつつ、お伝えしなければならないことは漏れなく伝えるスキルが身につきます。
比較的、裁判所はマニュアルが整っていると感じていますが、来庁者対応に関するマニュアルはありません。先輩職員の背中を見ながら対応方法を学んでいくことになります。
民事部・刑事部などの事件部では、手続きの流れを説明するのが主な仕事
民事部や刑事部といった「事件部」に配属されている場合、基本的には手続きの流れを説明することがほとんど。まずは自分が手続きの内容を理解することも必要です。
\裁判所事務官(裁判所職員)の来庁者対応については以下でご紹介しています/
特殊なルールに基づいて作成される「司法行政文書」を読み砕くスキル
裁判所での仕事は、裁判所職員(裁判所事務官・裁判所書記官など)が職務上作成・取得などを行う「司法行政文書」に基づいて進められることがほとんどです。
司法行政文書は、お堅い言葉で書かれていたり、1文が長く複雑だったりと一般的な文書と比べて読みにくいのが難点。
慣れていなければ、一度で内容を把握することが難しいと感じることもあります(少なくとも私はそうでした^^;)。
司法行政文書は、裁判所職員が仕事で作成・取得した、文書・図画・電磁的記録
裁判所が提示している「司法行政文書」の定義は以下の通りです。
「司法行政文書」とは,裁判所の職員が職務上作成し, 又は取得した司法行政事務に関する文書,図画及び電磁的記録(電子的方式,磁 気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録 をいう。第10の1において同じ。)であって,裁判所の職員が組織的に用いる ものとして,裁判所が保有しているものをいう。
簡単にお伝えすると、司法行政文文書は、裁判所職員が仕事上で作ったり取得したりした文書・図画・電磁的記録のことです。
仕事をするなかで、徐々に「読み砕く」ことができるようになる
裁判所事務官として働くなかで、司法行政文書を読み砕くスキルが徐々に身についていきます。
例えば、裁判所が提示している「司法行政文書」の定義は以下の通り。
「司法行政文書」とは,裁判所の職員が職務上作成し, 又は取得した司法行政事務に関する文書,図画及び電磁的記録(電子的方式,磁 気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録 をいう。第10の1において同じ。)であって,裁判所の職員が組織的に用いる ものとして,裁判所が保有しているものをいう。
一見して、内容が読み取りにくいと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。裁判所事務官になると、このような「司法行政文書」をもとに仕事を進めていくことがほとんど。
英語の知識を身に付けると英文が読めることと同じように、経験を積むことでだんだんと読み解けるようになります。
\司法行政文書については以下で詳しくご紹介しています/
ミスなく書類を作成・決裁に回す事務処理スキル
裁判所事務官(裁判所職員)は、裁判所書記官による指示のもと裁判手続きに関する事務を行うのが仕事。
もちろん、事務処理スキルも身についていきます。
書類を作成し、ミスがないかチェックできるようになる
パソコンを使用した書類の作成スキル。WordやExcelの前提知識があるとなお良い
裁判所事務官(裁判所職員)になると、パソコンで書類を作成するスキルが身に付きます。
裁判所事務官の仕事のなかで、一日の大半を占めるのがパソコンでの書類作成です。作成する書類は、次回の裁判日を通知する書類や、証人を呼ぶ際にかかった旅費の請求書までさまざま。
毎日のように何かしらの書類を作成するので、仕事を日々こなすなかで、書類を効率よく作成できるようになりました。
\裁判所事務官が作成する書類の種類や必要なスキルはこちらから/
裁判所事務官(裁判所職員)になるならWordやExcelの知識が必要!面接官へのアピールも兼ねて資格を習得するのもおすすめ
裁判所事務官(裁判所職員)が仕事中に使用することが多いのは、専用システム・Microsoft Word・Microsoft Excel。
特にWordやExcelの知識はあるものとしてマニュアルが作成されているので、一通り使えるようにスキルを身に付けておくのがおすすめです。
Word・Excelなどのスキルを証明できる国際資格「マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)」を取得すれば、Microsoft系の知識に加え、新たな資格も得られます。
「ただWordとExcel使えます」とアピールするより、第三者からスキルを認定されることで得られる資格を持っているほうが、面接官の印象にも残るのではないでしょうか。
Word・Execlとそれぞれ資格が分かれているので、自分のペースで1つずつチャレンジできるのも魅力です。
プリントした書類と書類を照合し、内容をチェックするスキルも養える
裁判所事務官(裁判所職員)が行う書類作成の仕事は、自分で作成した書類の内容確認までがひとつの仕事です。
裁判所事務官が作成した書類は、上司である裁判所書記官や裁判官によるチェックをクリアしなければ、基本的には外に出ません。
ただ、裁判所事務官により作成された書類は間違っていないことが前提としてチェックされるため、裁判所事務官が作る書類には正確性が求められます。
入力ミスがないか細部まで確認・適宜修正したうえで上司へ回す必要がある
具体的には、電話番号の照合や半角・全角の混合がないかどうかなど、入力ミスがないか細部まで確認・適宜修正された状態で、上司へ回さなければなりません。
慣れがものを言う仕事なので最初は見落としもありますが、チェックすべきポイントが徐々に見えてくるようになります。
公的書類に関する知識や書類を読み解くスキル
裁判所事務官になると、公的書類に関する知識や書類を読み解くスキルが身につきます。
裁判所事務官が携わる裁判手続きには、戸籍・住民票・登記簿などの公的書類を添付書類としているものが大半です。
事前に公的書類の読み方が分かっていると、仕事が進めやすくなる
公的書類が読めることで、必要な情報が書かれた場所を特定しやすくなり、仕事も進めやすくなります。
毎日のように公的書類を見ながら書類を作成することになるため、読み方がわからないと仕事に時間がかかります。
例えば、戸籍は戸籍謄本(全部事項証明)・戸籍抄本(個人事項証明)など、複数に分類されている公的書類。各書類の違いや手元にある別の書類では代用できないのかなどを聞かれたときにもスムーズに対応しやすくなります。
\裁判所職員(裁判所事務官)の仕事内容・職場の雰囲気などに関する情報を詳しくご紹介しています/
(1)裁判所事務官の仕事内容について:【元裁判所事務官が解説】裁判所事務官と裁判所書記官の違いは?仕事内容・お給料・学歴などについて
(2)裁判所事務官の職場の雰囲気について【元裁判所事務官が内部事情を詳しく紹介】職場環境はどんな感じ?
(3)裁判所書記官試験について:【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所書記官試験の受験事情■そのほか、裁判所事務官時代のリアルでニッチな情報はこちらで随時更新中です!
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