裁判所事務官はきつい？交渉不要だけど終わらない。「期日調整」のリアルと新人さん向け仕事術

2013年4月〜2018年3月まで裁判所事務官として勤務し、現在はライターをしているかもめです。

裁判所の仕事の中でも、特に地味で、精神を削られるのがこの「期日調整」。 辞めたいとまでは思いませんでしたが、「なんでこんなに調整できないの…！」と叫びたくなるきつい瞬間は何度もありました（笑）。

今日は、そんな終わらない仕事に悩む新人さんや、これから裁判所事務官になる方へ、元裁判所事務官の私が実践していた「サクッと終わらせる仕事術」を伝授します（勤務当時の情報です）。

■裁判所事務官の仕事内容に関係する、他の連載はこちらです。
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官の仕事内容は？電話対応編
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官の仕事内容は？書類作成編
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官の仕事内容は？日直・当直編

初回の裁判日を調整するのは、裁判所事務官の役割

裁判所では、裁判日のことを期日といい、裁判の日程調整を「期日調整」といいます。

この期日調整のうち、最初の裁判日については基本的に裁判所事務官が行っています。

裁判所事務官が行う「期日調整」のリアルな流れ

私が実際にやっていた手順は以下の通りです。 自分の裁量で決めるのではなく、「裁判所書記官の指示通りに、パズルのピースを埋める」ような作業です。

(1) 指示を受けて候補日をピックアップ

裁判所書記官から「この期間で候補を出して」と指示を受けます。

法廷の空き状況を確認し、ルールに沿って機械的に候補日を2〜3日ピックアップします。

(2) 関係者への電話連絡（ひたすら架電）

候補日をもとに、関係者へ電話をかけます。

ここで求められるのは交渉術ではありません。「不在の相手を何度も追いかける粘り強さ」です（笑）。

【ここがきつい！元裁判所事務官の裏話】

弁護士の先生は多忙で、電話がなかなか繋がりません。

事務員さんのみで期日調整ができればいいのですが、先生から直接返事をもらうか、もらった返事を事務員さんから電話で伝えてもらうパターンが大半。

やっと回答がきても「その日はダメ」と言われたら、また書記官に確認して、別の候補日を出して…という「伝言ゲーム」を繰り返します。

自分で勝手に日時をズラせないので、決まるまでは地味に精神を削られます。

(3) システムへの登録 全員の都合がついたら、システムに登録して完了です。

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ミス厳禁！期日調整を乗り切る必須アイテム

期日調整は「言われた通りにやる」仕事ですが、だからこそ「聞き間違い・伝え間違い」は許されません。

「〇日の午後」と言われたのに、うっかり別の時間で登録してしまったら大惨事です。 自分の記憶を過信せず、正確に処理するために私が頼っていたのが「アナログな管理グッズ」でした。

例えば、大きめの付箋（ノートタイプ）。

電話中に「A案はダメ、B案ならOK」といった情報を整理するには、メモスペースが広いこの付箋が最強でした。 「1件につき1枚」と決めて使い、完了したらシュレッダー。これで情報の混乱を防いでいました。

私が実践したメンタル防衛術「17:00以降は明日の自分に任せる」

結論から言います。私は期日調整の電話を「17:00」で打ち切っていました。

実は、多くの法律事務所は17:30頃に受付を終了してしまいます。 つまり、17:00過ぎに焦って電話をかけても、繋がらないことの方が多いのです。

これ、誰も幸せになりませんよね。

だからこそ、「17:00までに繋がらなければ、ハイ明日！」と割り切るのが正解です。

これは決してサボりではなく、「裁判所事務官の強み（定時の17:00上がり）」と「相手の営業時間」を考慮した、効率的な仕事術…だと認識していました。

私だけでなく、ベテランの事務官たちも涼しい顔でこの「17:00ルール」を実践していました（笑）。

仕事は無限に湧いてきますが、あなたの時間は有限です。この「割り切り力」を持つことから始めましょう。

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地味だけど重要。「事務処理能力」というスキル

派手な交渉スキルは身につきませんが、期日調整を通して「複数のタスクを並行して、正確に処理する力」は確実に鍛えられました。

これは公務員の世界だけでなく、どの仕事でも土台となる重要なスキルです。

ただ、「もっと自分のアイデアで仕事を動かしたい！」というタイプの方には、この「調整業務」が少し窮屈に感じるかもしれませんね。

実は裁判所ってこんな所。もっと深いリアルを知りたい人へ

裁判所事務官の仕事は、外からは見えにくい部分が多いですが、この記事で少しでもイメージが湧けば嬉しいです。

ほとんどの公務員本には綺麗事しか書いてないですよね？

実際に働き始めてから『現場のリアル』に直面すると、ギャップとの差にぶつかってしまうかも。

だからこそ、入庁前にこの本で事前に把握してみませんか？

著者の元裁判所書記官・中村さんが、私が書けないような内部事情まで『喝！』を入れてくださっています（笑）

【関連記事】

■裁判所事務官時代のことをまとめた記事になります。

（1）職場環境について
・【元裁判所事務官が内部事情を詳しく紹介】職場環境はどんな感じ？
・【公務員辞めました】公務員になるなら知っておきたい！職場が体育会系にぴったりでしんどかった話：裁判所事務官として勤務するなかで、体育会系の職場にあたった際の出来事を中心にご紹介しています。
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所職員のランチ事情

（2）仕事内容について
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官の仕事内容は？電話対応編
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官の仕事内容は？書類作成編
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官の仕事内容は？日直・当直編

（3）仕事道具について
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官のIT事情：裁判所事務官が手続き・書類作成に使用するツールなどについてもご紹介しています。
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官のパソコン事情：裁判所事務官に貸与される、ノートパソコンのことについてご紹介した記事になります。
・【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官の六法事情

（4）給与について：【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所事務官のお給料について

（5）裁判所書記官試験について：【元裁判所事務官が詳しく紹介】裁判所書記官試験の受験事情

（6）退職後のキャリアについて：【元裁判所事務官が詳しく紹介】退職後のキャリアプラン